日本では中央競馬と地方競馬が存在していますが、圧倒的に知名度が高いのは中央競馬です。
中央競馬では有馬記念やダービーといったビッグレースが多数開催されるうえ、これまで活躍した名馬のほとんどが在籍していました。
同様に、中央競馬のほうが獲得賞金も高く、中央に所属している騎手のなかでは1,000万円以上稼いでいる人がたくさんいます。
では、地方競馬に所属している騎手の年収がどれくらいなのか、気になった方もいるのではないでしょうか?
当記事では地方競馬の騎手の年収をはじめ、収入の仕組みや中央と地方の年収の差についてまとめました。
地方競馬の騎手の年収が気になる方はぜひ最後までご閲覧ください。
地方競馬騎手の年収源

そもそも地方競馬騎手の年収がどこから来ているか分からないという方もいるでしょう。
実は地方競馬騎手の収入源は様々なところから発生し、トータルすることで年収となっています。
ここからは下記4つの収入源について解説していきます。
- 進上金(レース賞金)
- 騎乗手当
- 調教手当
- その他の手当(開催手当とナイター手当)
進上金
進上金(しんじょうきん)とは、競走馬がレースで上位入選に入線した際、主催者から支払われる成功報酬のことで、一言でいうとレースの賞金です。
全てのレースに賞金が設定されており、例外がない限り1着から5着に入線した馬に賞金が与えられます。
賞金額はレースによって様々です。
地方競馬で例えるなら、年末の祭典である東京大賞典の1着賞金は1億円に指定されており、地方競馬の中ではもっとも賞金額が高いです。
ただし、グレードの付かない一般競走の賞金額はそこまで高くありません。
地方競馬の場合は開催競馬場によっても賞金額は異なります。
例えば地方競馬の中でも主流のレースが開催される大井競馬場の場合は一般競走の1着賞金が100万円に設定されています。
ところが地方競馬の中でも特にローカルな水沢や笠松、佐賀では1着賞金が40万円ほどのレースもあるのです。
なお、レースの賞金はすべて騎手の収入になるわけではなく、管理する馬のオーナーと関係者で分配する方式となっています。
この分配率にも決まりがあり、下記の通りとなっています。
関係者名 | 分配率 |
馬主(オーナー) | 80% |
調教師 | 10% |
騎手 | 5% |
厩務員 | 5% |
騎手が得られる賞金は全体の5%となっており、この5%が年収となります。
例えば、2024年の東京大賞典は前述したように1着賞金が1億円のレースです。そして1番人気のウシュバテソーロが勝利しました。
ウシュバテソーロに騎乗していた川田騎手は1億円の5%に当たる500万円を獲得しているのです。
騎乗手当
騎乗手当とは騎手がレースに出走した際に支払われる手当です。
調教手当はレースの着順問わず必ず獲得できるため、レースの騎乗回数が多いほど騎乗手当が発生し、結果的に年収増加につながります。
ちなみに、騎乗手当の金額は各地方競馬場やレースによって異なります。
例えば、大井競馬場の一般競走における騎乗手当は1着の場合1万8,000円、6着以下は1万3,000円です。
ところが、帝王賞やジャパンダートクラシックといったJpn1クラスのレースの場合は1着が11万円、6着以下でも5万円が支払われます。
上位に入線したほうが騎乗手当も高くなるため、稼ぎたいのであればレースで勝つことは非常に大事なのです。
調教手当
調教手当とは競走馬の調教で騎乗した際に得られる手当です。
競走馬はレースで勝つために常にトレーニングを行いますが、このトレーニングを調教といいます。
調教することで心身ともに鍛え上げ、レースで勝てる馬づくりを行っているのですが、基本的に調教に乗るのは競走馬を管理する助手です。
しかし、レースによっては主戦騎手が調教に騎乗する場合があります。
なぜ、騎手が調教に騎乗するかというと、現在の競走馬の状態を確認するためです。
そして、騎手が調教に騎乗した際に調教手当が発生します。
地方競馬における調教手当は各地方競馬場によって異なりますが、大井競馬場の場合は1日1頭あたり700円です。
進上金や騎乗手当と比較するとはるかに少額なので、地方競馬の第一線で活躍している騎手からしたら調教手当はお小遣いのようなものなのです。
開催手当とナイター手当
地方競馬騎手には開催手当とナイター手当も支払われます。
開催手当とは開催日にレースに出走した際に発生する手当で騎乗手当と似ていますが、騎乗回数問わず支払われるのが特徴です。
例えば、名古屋競馬場における開催手当は1開催につき2万円が支給されます。
ナイター手当はナイター開催が行われる競馬場で発生する手当です。
ナイター開催は昼間の開催と違って視界が見えにくいため、騎乗手当や開催手当とは別に賞金が発生しています。
ちなみにナイター手当も開催競馬場によって金額が異なりますが、名古屋競馬場の場合は4月から10月までの開催で1レースにつき1,500円、11月から3月は1レースにつき3,000円の手当が支給されます。

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地方競馬騎手の年収

前章では地方競馬騎手の4つの年収源について解説しました。
ここからは地方競馬騎手の平均年収はいくらなのか解説します。
地方競馬所属騎手の年収は約300~400万円
地方競馬所属騎手の年収は約300万円から400万円といわれています。
20代男性の年収が約385万、30代男性の年収が約504万円といわれているので地方競馬騎手の年収は平均よりも低い水準なのです。
ただし、今回取り上げた年収はあくまでも地方競馬全体の騎手の平均となっています。
地方競馬騎手の中でもリーディング上位の騎手は年収1,000万円を超えている騎手もいるので、実力次第で稼ぐことができる業種といえます。
所属する地方競馬場によって年収も変わる
地方競馬は全国に15か所ありますが、所属する地方競馬場によって年収は大きく変化します。
例えば、地方競馬の中でも主流レースがたくさんある南関東競馬場(浦和・船橋・大井。川崎)に所属している騎手は全体的に年収は高めです。
対して、地方競馬の中でも水沢や笠松、高知などのローカル地方競馬場に所属している騎手の年収は低い傾向にあります。
どうして地方競馬場ごとに年収の差があるかというと、ひとえにレースの賞金に差があるからです。
騎手の収入の大部分はレースの賞金なので、一つのレースの賞金額が高いほど年収も高くなり、低い場合はいくら勝っても年収はそこまで上がらないのです。
中央競馬所属騎手の平均年収は約1,000万円
日本には地方競馬だけではなく、有馬記念や日本ダービーが開催される中央競馬(JRA)が存在しています。
中央競馬に所属している騎手の年収は平均約1,000万円です。
この数値はリーディング上位の騎手だけではなく、年に数回しか騎乗しない騎手の年収も合わせた平均となっており、リーディン上位のC.ルメール騎手や川田将雅騎手、レジェンド武豊騎手レベルになると年収は1億を超えているといわれています。
地方競馬騎手の平均300~400万円と比較すると歴然とした差があるのです。

中央競馬と地方競馬の騎手の年収に差があるのはなぜか

日本では中央競馬と地方競馬という2つの組織があり、それぞれ所属している騎手がいます。
しかしながら、地方競馬の騎手と中央競馬の騎手には大きな年収の差がありました。
どうしてこれほどの年収の差があるのでしょうか?
ここからは地方競馬騎手と中央競馬騎手の間に年収の差がある理由を3つ解説します。
レースの賞金に差がある
地方競馬騎手と中央競馬騎手の年収に大きな差がある最大の要因は、レースの賞金に大きな差があるからです。
地方競馬の賞金は地方競馬場によって違いがありますが、賞金額が高く設定されている南関東競馬場の一般競走のレースで1着賞金100万円に設定されています。
ところが、中央競馬の未勝利戦の賞金を見てみると、1着550万円に設定されていました。
地方競馬の中でも賞金額が高く設定されている南関東競馬場の一般競走ですら、中央競馬の未勝利クラスのレースに及びません。
ひとつ前の見出しでも少し触れていますが、騎手の収入源の大半がレースを勝つことで得られる進上金です。
そのため、地方競馬よりも1レースあたりの賞金額が高く設定されている中央競馬のほうが稼ぐことができてしまうのです。
また、笠松や高知など、地方競馬場の中でもローカルと呼ばれる競馬場の賞金は賞金額が低く設定されています。
例えば、2024年12月10日の笠松競馬第一競走(C21組)の賞金は下記のように設定されていました。
着順 | 賞金 |
1着 | 40万円 |
2着 | 14万円 |
3着 | 8万円 |
4着 | 4万円 |
5着 | 2万円 |
レースで勝利したら40万円の5%にあたる2万円が収入になります。
ところが、もしも5着に入線した場合は2万円の5%にあたる1,000円しか得られません。
最低賃金相当の収入しか得られないのです。
このように、レースの賞金が低い場合はいくらレースで結果を残したとしても稼ぐことができません。
賞金額が高い中央競馬所属の騎手ほど年収が高く、ローカル地方競馬場に所属する騎手は年収が低くなる構造ができているので、年収に格差が生じているのです。
地方競馬よりも中央競馬のほうが売上が大きい
地方競馬は中央競馬ほどレースの賞金が高くありません。
なぜ、地方と中央の賞金に大きな差があるかというと、レースの売上に大きな差があるからです。
競馬主催者にとって売り上げの大半を占めるのが馬券です。
馬券が売れれば売れるほど主催者の利益が入るため、その利益をレースの賞金にあてることができます。
ところが、地方競馬は中央競馬ほど大きなレースや有名馬は多くありません。
しかも、中央競馬と比較すると広告にかけるお金もないです。
そのため、いくらレースを開催しても中央競馬ほど利益を出すことができず、競馬場によっては赤字になってレースの賞金を確保できずに廃止になるケースもありました。
レースの売上の大きさが中央と地方騎手の格差を生んでいるといっても良いでしょう。
もっとも、2000年代後半から急激に普及したインターネット投票により、現在は中央競馬だけではなく地方競馬の馬券もネットで購入できるようになりました。
地方競馬の大きなネックであった現地に足を運ぶ負担がネット投票の普及により解消され、いまではローカル地方競馬場でも黒字収支を出しており、少しずつですが賞金額もアップしています。
賞金の配分は中央競馬も地方競馬も変わらない
レースの賞金である進上金は騎手の収入の大部分を占めます。
しかしながら、中央競馬も地方競馬も騎手が受け取れる進上金の割合は5%と決まっています。
レースの賞金額が大きな中央競馬の騎手であれば5%でも一般の人より多くの収入を得られますが、地方競馬はレースの賞金が中央競馬ほど高くないので、賞金の5%は意外と多くありません。
中央競馬と地方競馬はレースの賞金額に大きな差がありますが、進上金の配分は変わらないので、この点も収入の格差が生まれる要因となっているのです。

【2025年最新】地方競馬の騎手の年収ランキングトップ5

地方競馬の騎手の年収は中央競馬の騎手と比較すると少ないです。
しかしながら、地方競馬の騎手の中でもリーディング上位の騎手は中央競馬の騎手に勝るほど収入がある人もいます。
ここからは、2024年1月1日から12月18日の期間の獲得賞金から、年収の多い騎手をランキング形式でまとめました。
リーディング上位の騎手がどれくらい稼いでいるのか興味のある方は是非ご覧ください。
※年収は獲得賞金額の5%から算出しています。
1位.森泰斗騎手(船橋) 年収5,956万円
もっとも年収が高かったのは2024年11月に引退した森泰斗騎手です。
船橋競馬に所属していた森泰斗騎手は20年以上南関東競馬の第一線で活躍しており、2016年に初めて年間勝利数300勝を突破、2024年に地方競馬通算4,400勝を達成し、まさに順風満帆といった矢先の引退表明でした。
引退理由は「体の面で思うような競馬ができなかった」とコメントされています。
まだまだ活躍できるだけの技術はあったものの、自分の競馬に納得いかない場面も増えてきたようで、2024年の11月に騎手免許を抹消、12月に引退セレモニーが実施されました。
引退後の進路は未定ですが、競馬関連の仕事に従事すると示唆されており、今後は騎手以外の形で競馬界を支えてくれるかもしれません。
2位.矢野貴之騎手(大井) 年収5,900万円
地方競馬騎手の年収第2位は多い競馬に所属している矢野貴之騎手です。
矢野貴之騎手はかつて存在していた群馬の高崎競馬所属騎手としてデビューしましたが、2024年の高崎競馬閉鎖に伴い、大井競馬場に移籍しています。
大井競馬場は地方競馬の中でも特にレベルの高い騎手や馬が所属していますが、その中で結果を残し、2021年には地方競馬のグレード競走での功績をたたえるNARグランプリ殊勲騎手賞を受賞するまでに至りました。
地方交流重賞においても中央所属馬に引けを取らない活躍を見せたり、2022年には通算2,000勝を達成など、今では地方競馬を代表するトップジョッキーとして数えられています。
3位.笹川翼騎手騎手(大井) 年収5,738万円
地方競馬騎手の年収第3位は笹川翼騎手です。
笹川騎手は1994年生まれの騎手でもともと中央競馬の騎手を目指していましたが、2度の不合格のため地方競馬の騎手になりました。
デビュー年の2013年にはいきなり43勝を挙げて地方競馬の最優秀新人賞を獲得しています。
その後も地方競馬で安定した活躍を見せ、2024年の7月に地方競馬通算2,000勝を達成しました。
重賞レースにおける活躍も目覚ましく、2023年には園田競馬所属のイグナイターでJBCスプリントを優勝し、G1ジョッキーの仲間入りを果たしています。
2024年には新潟競馬のレースに出走してJRAの初勝利を挙げ、元地方騎手で現在はJRAに所属している戸崎圭太騎手や内田博幸騎手のようになりたいとコメントされていることから、もしかしたら近い将来JRAに移籍されるかもしれません。
4位.吉原寛人騎手(金沢) 年収3,782万円
地方競馬騎手の年収第4位は金沢競馬に所属している吉原寛人騎手です。
吉原騎手は地方競馬の中でもローカルに位置する金沢所属ですが、南関東競馬場をはじめ、どの地方にも出走しています。
金沢所属にも関わらず全国各地のレースに出走できる最大の理由は、金沢競馬が日曜と火曜の開催をメインにしており、交流重賞が行われる水曜日は非開催だからです。
日曜と火曜に金沢で騎乗し、その足で他の地方の交流重賞に向かうことが可能な環境なので、全国各地を飛び回れるようになりました。
また、金沢競馬場がある石川県は北陸にあるため、冬季は雪の影響を受けやすく1月から3月中旬までレースが行われません。
そのため、この時期は一時的に他の地方競馬に籍を置き、他の地方競馬でレースに出走しているのです。
全国各地を飛び回っている吉原騎手ですが、これまでいくつも交流重賞を制しており、実績は地方騎手の中でも上位です。
地方競馬の中ではレベルの高い南関東競馬場でも引く手あまたなので、今後も強い馬とのコンビで大舞台に挑み続けることでしょう。
どのような走りを見せてくれるのか、今後も楽しみです。
5位.御神本訓史騎手(大井) 年収3,136万円
地方競馬騎手の年収第5位は御神本訓史騎手です。
御神本騎手は島根県浜田市生まれの騎手で、デビューした1999年には当時存在していた益田競馬場でデビューを果たしました。
デビュー初年度から活躍し、その活躍ぶりは全国の地方競馬関係者に広まりましたが、2022年に益田競馬場が廃止となったことで大井に移籍しています。
大いに移籍してからも結果を残していましたが、落馬で意識不明になったり騎手免許の更新試験で不合格など、決して順風満帆というわけではありません。
2010年代は南関の中堅騎手としての地位が定着しつつありましたが、2023年に出会ったミックファイアで史上2頭目となる無敗の南関三冠馬になると再び脚光を浴びるようになりました。
現在も南関東を代表する騎手として活躍しています。

地方競馬の騎手の年収:まとめ

今回は地方競馬の騎手の年収についてまとめました。
地方競馬騎手の平均年収は300万から400万円といわれており、中央の騎手どころか一般のサラリーマンと比較しても年収は低いです。
特に、ローカル地方競馬に行くほど年収は低くなることから、人によっては掛け持ちアルバイトをしながら生活している人もいるようです。
年収の格差は問題視されていますが、それでも近年はネット投票の影響でレース賞金が上がり、少しは改善されています。
地方競馬の存続のためにも、騎手が安定して食べていける環境を整えてもらいたいものです。

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