皆さんは競馬のレースをどのように見ているのでしょうか。
競馬場で臨場感たっぷりに見る人も、ネットで自分一人の空間でゆっくり観戦する人もいることでしょう。
そのどちらにも共通しているのが、レースの実況放送ですね。
競馬のレースは実況放送が無くては考えられないと言ってもよく、レースを思い返す時は実況とセットになっていることが多いです。
そんなレース実況の中で、今も語り継がれる名実況と呼ばれるものがあります。
競走馬が全力でぶつかり合う戦いだからこそ、それを伝えるアナウンサーの口から自然と名言がこぼれ出るのでしょう。
この記事はそんな競馬の名実況を、独自に選んだアナウンサーランキングで振り返ります。
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競馬の名実況アナウンサーランキング第1位:杉本清氏
競馬の名実況と聞いて、多くの競馬ファンが真っ先に思い浮かべるのが杉本清氏ではないでしょうか。
その独特な語り口は「杉本節」とも言われ、2024年現在もYouTubeなどで多くの人に視聴されています。
絶叫系が多い昨今のスポーツ実況ですが、杉本氏のそれは静かで淡々として、それでも人の心の奥深くに届くものでした。
そんな語りの魔術師である杉本氏の、多くの名実況の中から2つを紹介します。
「私の夢はサイレンススズカです」
1999年宝塚記念の中継が始まってすぐ、杉本氏はこのレースに出走しない馬のことを話し出します。
「あなたの、私の夢が走ります。あなたの夢はスペシャルウイークかグラスワンダーか」
「私の夢はサイレンススズカです。夢かなわぬとはいえ、もう一度この舞台でダービー馬やグランプリホースと走ってほしかった」
サイレンススズカは前年の宝塚記念優勝馬で、その後天皇賞(秋)で骨折し予後不良となった名馬です。
杉本氏は、サイレンススズカがこのレースを走ることを夢見たのです。
この実況は多くのファンの心を打ち20年以上経った今でも、宝塚記念が近くなると語られています。
「菊の季節にサクラが満開」
1987年の菊花賞は、ダービー馬のメリーナイスが1番人気でした。
一方皐月賞馬のサクラスターオーは脚部故障でダービーを見送り、菊花賞にぶっつけ本番で挑むことから単勝は9番人気です。
しかしレースでは潜在能力が高いサクラスターオーが、4コーナーをうまく回って馬群の間から伸びてきます。
そしてゴールまではまだ100mほど残っているにも関わらず、早くも杉本節が炸裂します。
「サクラ、サクラ、サクラスターオーです。先頭はサクラスターオー、菊の季節にサクラが満開!」
皐月賞を勝ってその後の故障、菊花賞は9番人気、そんな様々な思いがあるからこそ「サクラが満開」の言葉が人の心に響いたのでしょう。
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競馬の名実況アナウンサーランキング第2位:三宅正治氏
競馬の名実況アナウンサーランキング第2位は、フジテレビの三宅正治氏です。
若い競馬ファンは競馬実況ではなく、朝の顔としての印象が強いかもしれませんね。
三宅氏のしっかりした発音は聞きやすく、ゴール前で熱く語る実況は心を揺すぶられます。
そんな三宅氏の名実況を振り返りましょう。
「間違いなく飛んだ!」
歴代最強馬に推す人も多いディープインパクトは、2006年の有馬記念を引退レースに選びます。
ここまで13戦11勝2着1回1失格と、ほぼ完璧な成績を残していました。
後方から猛烈な末脚で追い込んでくる走りを、主戦の武豊騎手は「飛ぶように走る馬」と表現しました。
そして迎えた有馬記念は、単勝120円の圧倒的一番人気で出走します。
第4コーナーで大外をスムーズに回ったディープインパクトを、三宅氏は「ディープが今、翼を広げた」と表現しました。
そしてあっさりと先頭に立つと「ディープインパクト先頭、間違いなく飛んだ」と実況します。
ゴール前は「最後の衝撃だ、これが最後のディープインパクト〜」と熱い実況で締めくくったのです。
競馬ファンはこの名実況と共に、ディープインパクトの引退レースを記憶に刻みました。
「河内の夢か豊の意地か」
2000年の日本ダービーは、武豊騎手騎乗の皐月賞馬エアシャカールが1番人気でした。
河内洋騎手のアグネスフライトは、オープン・GⅢを勝って3番人気での挑戦です。
最後の直線、先に抜け出したのはエアシャカールですが、その外からアグネスフライトが猛然と襲いかかります。
そして最後の100mのデッドヒートで、三宅氏の名実況が飛び出します。
「エアシャカールかそれともアグネスか、河内の夢か豊の意地か、どっちだあ〜」
ハナ差の決着でアグネスフライトが差し切りましたが、河内騎手と武騎手は師弟関係です。
その戦いを瞬時に「夢」と「意地」で表現した内容は、まさに名実況ですよね。
競馬の名実況アナウンサーランキング第3位:馬場鉄志氏
競馬の名実況アナウンサー第3位には、馬場鉄志氏を選びました。
馬場氏は関西テレビで活躍したアナウンサーで、落ち着いた語り口でレースを実況します。
名実況になる時の力強い口調とのギャップが大きく、そこが人々の心に残るのでしょう。
馬場氏の2つの名実況を紹介します。
「世界のホースマンよ見てくれ!」
2005年の競馬界は、怪物ディープインパクトの話題で持ち切りでした。
クラシック3冠が確実視されていた菊花賞は、なんと単勝が元返しの100円、もはや負ける要素がないレースです。
第4コーナーを回ったディープインパクトが一気に前を捉えにいくと、京都競馬場は大歓声に包まれます。
「とらえた!とらえた!とらえました!あと100m、先頭はディープインパクトだ」
馬場氏の興奮が伝わってきます。
そして先頭でゴールする直前、この名実況が生まれたのです。
「世界のホースマンよ見てくれ!これが日本近代競馬の結晶だ、ディープインパクト〜」
圧倒的に強いディープインパクトの出現で、世界と戦えると感じた名実況でした。
「ベガはベガでもホクトベガ」
1993年ベガは桜花賞とオークスを制し、牝馬3冠を目指してエリザベス女王杯に出走します。
秋華賞創設前の1993年は、エリザベス女王杯が3冠目とされていたのです。
レースは残り200m、ベガが馬群の中から抜け出すことができません。
代わりに最ウチを突いて上がってきたのがホクトベガです。
100mを切るとさらに加速しそのままゴールを駆け抜けたところで、この名実況が流れます。
「ベガはベガでもホクトベガ」
この実況は多くのファンが思ったことを言ってくれたとして、大変人気になりました。
このあと馬場氏は多くのGⅠレースの実況を任されますが、この名実況が一つのきっかけとなったことは間違いないですね。
【競馬】ディープインパクトの名実況
ディープインパクトはGⅠレースを7勝もした名馬です。
440kg前後の比較的小さな体でしたが、「飛ぶように」と表現された末脚は魅力的でした。
ファンに愛されたディープインパクトには多くの名実況がありますが、その中の一つである
「ハーツクライよハリケーンランよ待っていろ」
を紹介します。
無敗でクラシック3冠を達成したディープインパクトでしたが、有馬記念で初めて2着に敗れます。
その時に勝ったハーツクライは、その後ドバイシーマクラシックを制し世界のトップホースの仲間入りをします。
一方ディープインパクトは阪神大賞典を圧勝して、天皇賞(春)に進みました。
レースはディープインパクトにしてはめずらしく、第4コーナー手前で早めに先頭に躍り出ます。
ゴールまで150m付近、勝利を確信した馬場鉄志アナウンサーはこう実況します。
「逃げる、逃げる、ディープインパクトです」
「ハーツクライよ、ハリケーンランよ待っていろ!」
国内敵なし、いよいよディープインパクトも世界に向かうぞという挑戦状みたいでカッコいいですよね。
【競馬】オルフェーヴルの名実況
オルフェーヴルはクラシック3冠馬で、その後は宝塚記念を勝つなど華やかな成績を収めました。
しかし一方でレース後に主戦の池添謙一騎手を振り落とすなど、暴れん坊の一面も持っていたのです。
「金色の暴君」とも言われたオルフェーヴル、引退レースの名実況
「これが、オルフェーヴルだ〜」
を振り返ります。
凱旋門賞2年連続2着の悔しい思いをしたオルフェーヴルが、引退レースに選んだのが2013年の有馬記念です。
過去には阪神大賞典で走るのを止めようとしたり、天皇賞(春)では謎の凡走(11着)があったりとハラハラするレースもありました。
有馬記念は単勝1.6倍に支持されます。
レースは後方待機のオルフェーヴルが徐々に進出し、第4コーナーでは2番手まで上がってきます。
そして直線に向くと、後続を一気に引き離していったのです。
「これが、これが、目に焼き付けろ、これが、オルフェーヴルだ〜!」
強い時、暴れている時、逸走してしまう時、そんな全てのオルフェーヴルが最後の「オルフェーヴルだ」に込められています。
馬名を叫んだだけで、ファンには全てわかるような名実況でした。
【競馬】コントレイルの名実況
コントレイルはディープインパクトの子供で、父と同じく無敗で3冠馬となりました。
しかしその後はジャパンカップ2着、大阪杯3着、天皇賞(秋)2着と勝利から見放されます。
早熟説も流れる中、4歳にして引退レースとして選んだのがジャパンカップでした。
2021年のジャパンカップはその年のダービー馬シャフリヤールも参戦しましたが、コントレイルは単勝1.6倍に支持されました。
レースはシャフリヤールを見るような形で進み、直線を向くとコントレイルは一気に加速して抜き去ります。
そこでこの名実況が発せられます。
「もう他には何も来ない、空の彼方に最後の軌跡」
儚く消えていく飛行機雲と、早すぎる引退がダブって見える、どこか詩的な実況でした。
競馬の名実況ランキング:まとめ
競馬の名実況について解説しました。
紹介した3人の名実況を振り返ってみると、共通したあることに気付きます。
それは何も話さない「間」を恐れていないことです。
ラジオではそうはいきませんが、彼らが担当したのはテレビ放送です。
映像で見えているものは語らないというのも、無駄なことを口にしないという技術だと感じました。
全力の戦いから生まれる競馬の名実況、ぜひいろいろと見てみてくださいね。
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